· 

「透析導入に至らないための糖尿病治療の実績と他職種連携」

7/24(火)院内勉強会(Web講演会)に参加しました。テーマは「透析導入に至らないための糖尿病治療の実績と他職種連携」ということで、トマト内科においても糖尿病腎症と診断されている患者さんがいるため日々の療養支援の中に取り入れられることがあるのではないかと興味を持ち勉強会に参加しました。

 

沖縄県中部地区で開業しているクリニック医師より「糖尿病腎症重症化予防プログラムの実績」同クリニックの糖尿病療養指導士、看護師より「看護師の立場からの糖尿病療養支援と他職種連携」という内容の発表でした。

 

最新の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が疑われる人・可能性を否定できない人合わせると全国に2,210万人いると言われており、年々増加傾向かつ高齢化が進んでいるとのことです。糖尿病3大合併症の一つ、糖尿病腎症にて新規に透析導入される患者さんは全国で年間16,000人ほどいます。透析を受けることになれば、生活の質(QOL)も著しく損なわれます。よって、患者さん自身の適切な療養行動で腎症悪化を予防することが大切になってきます。

 

沖縄県中部地区では、腎症重症化予防として、病院・クリニック・行政・健康保険協会などの組織が連携し、疾患管理テンプレートを各施設で共有して使用し、早期に糖尿病専門医や腎臓専門医に依頼することで腎症悪化の予防への取り組みをされていました。クリニックにおいては、情報共有のために月に1回院内合同カンファレンスを行い、腎症悪化の可能性のある患者さんの抽出を行うとともに、外来療養支援体制の見直しも積極的に行っているということでした。また、患者さんに関わる医療者が一貫して同じ指導ができるように日本糖尿病協会が発行しているカードシステムを使用し患者さんへの療養指導にあたっていました。

 

トマト内科ではさっそく、臨床研究部を発足し、腎症悪化の可能性のある患者さんの抽出をし、介入強度を層別化していくことにしました。

 

糖尿病腎症は、尿中のたんぱく量や腎臓の血液ろ過能力によって、第1期から第5期に分けられます。第1期は尿検査や血液検査で異常の見つからない時期です。尿蛋白は検出されませんが、アルブミンという小分子たんぱくが尿中に一定量確認されると第2期です。この時期は血糖値と血圧を改善することで尿中アルブミンを減少させ、第1期に戻すことできるため、この時期に発見して早期対策を始めることがとても大切です。

 

トマト内科では糖尿病患者さんは、基本的に毎回尿中アルブミンの評価をし、第2期にならないように、また第2期になったら第1期にもどせるように、治療の見直しを行っています。

 

2を過ぎて尿中に多量のアルブミンが出てくると第3期です。尿に排泄される蛋白も増加し、血中の蛋白が薄くなるため、浮腫が起こりやすくなります。さらに腎機能が悪化すると腎不全期と言われる腎症第4期です。血糖値や血圧の治療が不十分であると、ここから数年で透析(腎症第5期)に移行します。

 

そして以前のブログで紹介されたDKDの病態で、尿中アルブミンの増加を伴わずに、腎機能が低下し透析に至る糖尿病患者さんも少しずつ増えてきています。

 

透析になることで身体的な問題だけでなく、自由な時間が減ることでQOLが損なわれてしまいます。糖尿病と診断されても、合併症の発症および悪化を予防し健常人と変わらない生活を送るためには患者さん自身の自己管理が最も重要です。その自己管理を含めた糖尿病療養を支援するのが糖尿病療養指導士です。トマト内科では、医師の指示のもと糖尿病療養指導士が中心となって、看護師・管理栄養士・臨床検査技師・医療クラークがチームを作り、日々患者さんの合併症予防や合併症悪化予防に向けて療養指導にあたっています。

 

今回の研修会に参加したことで、院内のみではなく他の組織との連携も意識した取り組みを考慮し、今後も患者さんが本来備えている自己管理能力を最大限引き出せるよう患者さんに寄り添った看護を提供していきたいと思います。

 

 

糖尿病療養指導士、看護師 渡部