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花粉症・舌下免疫療法

花粉症の方にはつらい季節です。

最近獨協医科大学で行われた「2019年アレルギー週間記念学術講演会」に参加してきました。

 

トマト内科の患者さんの中にもたくさんの花粉症の方がいらっしゃいます。花粉症による不眠などは、血糖上昇、血圧上昇につながるため、花粉症はしっかり治療しなければならない疾患です。

 

私たちの体は「花粉」という異物(アレルゲン)が侵入すると、排除しなければならない侵入者と判断したときは、「花粉」反応する物質を作ります。この物質を「抗体」と呼びます。

 

抗体ができた後、再び花粉が体内に侵入すると、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面の「抗体」と花粉が結合します。その結果、アレルギー反応が起き、肥満細胞から化学物質(ヒスタミンなど)が分泌され、花粉をできる限り体外に放り出そうとします。

 

ヒスタミンなどが分泌され、体に作用すると

 ・くしゃみで吹き飛ばす

 ・鼻水、涙で洗い流す

 ・鼻づまりで中に入れないようにする、、、、などのアレルギ症状が出てきます。

 

花粉症の治療には

①アレルギ症状を抑えることが目的の薬物療法

②アレルギー反応そのものを抑える減感作療法があります。

 

①アレルギ症状を抑えることが目的の薬物療法、は大きく分けて抗アレルギー薬によるものと、ステロイド薬によるものがあります。

 

抗アレルギー薬は、肥満細胞から放出されるヒスタミン、ロイコトリエンなどを抑える薬です。即効性に欠けるため花粉飛散開始の1~2週間前からの服用が必要と言われています。

 

 ステロイド薬は抗体をおとなしくさせる薬です。即効性はありますが、いろいろな副作用が出る可能性があるため重症の場合など、どうしてもの時に使用するのが一般的です。

 

 ②アレルギー反応そのものを抑える減感作療法、はアレルギー反応の原因である「アレルゲン」を少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を和らげる治療法です。

 

 減感作療法アレルギー反応を起こさなくする可能性のある治療法と考えられています。減感作療法では皮下注射をすることが多かったのですが、最近手軽に自宅で舌下に薬剤を投与する舌下免疫療法が開発されました。現在、スギ花粉症、ダニアレルギーの2つのアレルギに対して、舌下免疫療法を行えます。

 

 

スギ花粉症では、治療開始に先立ち、採血でスギの抗体の確認を行います。

最初は少量のスギ花粉エキスを舌の下に投与します。副作用がなければしだいに濃度を上げていき、その後3~4年間継続していきます。

 

口腔内のイガイガ感、口内炎、舌の腫脹、胃部の不快感などが起きることがあります。

それらの症状に対して胃薬の使用や舌下した後吐き出して濃度を薄めていく(吐き出し法)等での対応でかなり緩和されます。

 

重篤な副作用として、アレルゲン投与に対する過剰反応として、アナフィラキシーショックが起きる可能性がありますが、現時点での発生報告はないようです。

 

舌下免疫療法が行える施設は限られています。トマト内科は舌下免疫療法を行うことができる施設です。スギ花粉症に対する舌下免疫療法は花粉が飛散していない時期に開始します。例年ですと5月〜12月に開始します。5歳から舌下免疫療法の適応があります。費用は3割負担の方で、一か月あたり 約2,300~2,800円です。

 

舌下免疫療法はほとんどの方に効果が認められているそうです。実際、トマト内科で昨年から舌下免疫療法を開始した方の中には、今シーズンの抗アレルギ薬の内服がなくなっていらっしゃる方がいらっしゃり、予想以上の効果を実感しています。

 

舌下免疫療法は、花粉症の症状の緩和、抗アレルギ薬内服による眠気や集中力低下などの症状の軽減が期待でき、みなさんにおすすめしたい治療です。特に受験を控えた方などには、受験数年前からの治療がおすすめです。

 

看護師 佐藤