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1型糖尿病に使うインスリン製剤

持効型溶解インスリンアナログ製剤は基礎インスリン分泌を補うものですが、20時間程度から作用が減弱するものや、24時間以上の長時間作用が続くものがあります。

 

トマト内科では24時間以上の長時間作用する持効型溶解インスリンアナログ製剤の使用には慎重です。

 

低血糖による植物状態・・ほとんどの糖尿病医が、経験することがないであろう出来事です。昏睡状態となる低血糖(30mg/dl以下程度)が長時間続くことで重篤な脳後遺症がおきます。

 

総合病院勤務中の経験です。他院受診中の1型糖尿病の方は、家族が長期不在中に低血糖を起こし、意識をなくし自宅の床に倒れていました。何日間倒れていたかは不明です。家族が帰宅したときは、呼びかけにまったく反応がなく、私の勤務する病院に救急搬送されブドウ糖の注射で正常の血糖に復帰しましたが、意識が戻ることはなく、植物状態になっていました。 

 

家族がお持ちの記録では直近のHbA1c5.6%。1型糖尿病では低すぎます。低血糖を頻発していたことが予想されました。

 

グルカゴンは血糖を上げるホルモンです。1型糖尿病ではグルカゴンが枯渇していることが多く、ひとたび低血糖になると血糖を上げることができず、重症の低血糖になるため細心の注意が必要です。

 

加えてその方は42時間にわたって平坦な効果があるとプロモーションされていた持効型溶解インスリンアナログ製剤が処方されていました。低血糖になり意識がなくなったその方は、ブドウ糖を摂取することもできず、長時間低血糖が続いていたと思われました。もう少し作用時間の短い持効型溶解インスリンアナログ製剤であれば、結果は異なっていたかも知れません。

 

トマト内科に受診されている1型糖尿病の患者さんに長時間作用する持効型溶解インスリンアナログ製剤をお勧めすることはありません。20時間程度で作用が減弱しはじめる持効型溶解インスリンアナログ製剤が好ましいと考えています。

 

院長 増渕